成田亨(なりたとおる/1929〜2002)はウルトラ怪獣のデザイン画を描いた人として、一部の熱狂的ファンの間ではよく知られていました。氏がデザインした「ガラモン」「ウルトラマン」「バルタン星人」などは、世代を超えて親しまれ、特撮映画の世界のみならず、あらゆる表現領域から後生に残る芸術として、今後も語り継がれていくことは間違いありません。
弊社代表は大学生の頃から「この知られざる偉大な芸術家の功績をなんらかの方法で伝えたい」と考えていました。それから十数年が経ち、成田亨のウルトラ原画を所蔵する青森県立美術館の担当学芸員さんとの出会いをきっかけに、このたび開催された初の大回顧展「成田亨 美術/特撮/怪獣」展(富山県立近代美術館〜福岡市美術館〜青森県立美術館と3館巡回)と初の集大成的作品集「成田亨作品集」のアートディレクションおよび出版プロデュースをお手伝いする運びとなりました。
出版にあたっては、事前にクリアすべき難しい問題が横たわっていましたが、以前からご縁のあった羽鳥書店に相談を持ちかけたところ、調整可能なことが判明し、そこからは急ピッチでリサーチ、編集、デザインを進行し、展覧会開催前にはなんとか無事に完成。総頁数は400頁、収録作品数は未発表なども含む515点、厚さは3.5cmというヴォリューム満点の本に仕上がりました。作品集は、発売1週間で増刷決定、amazonの全カテゴリーランキングでも一時ベスト20位に入るなど、成田亨への人気と関心の高さがハッキリと伺える結果となり、巡回展も各地で大好評のうちに幕を閉じました。
ウルトラの仕事は成田亨という芸術家の一側面を伝えるに過ぎません。本プロジェクトは彫刻・絵画・特撮美術などの分野でも非凡なる才能を発揮していた氏の全貌に迫る試みでもありましたが、同時にこれをきっかけとして、成田亨の真の評価が始まることを切に願ってやみません。その一助になれたならば、本プロジェクトははじめて成功したと言えるかもしれません。
註)「Tohl Narita」の表記について。成田亨は生前「Toru」ではなく「Tohl」と綴っていた。